担当医

認知症はよくなります

認知症外来を担当していただいている松野晋太郎先生は、平成17年6月から毎週水曜日に内科外来の診察を担当され今年で17年目になります。

今回、認知症外来を始めるにあたり松野先生に認知症診療に携わるようになったきっかけやご自身が体験された改善例などについて語っていただきました。

松野晋太郎

  • 松野晋太郎
  • 市民病院ではどのような病気を診てこられましたか
    循環器内科が専門なので、心疾患を中心に動脈硬化の危険因子である高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の診療を担ってきました。
    どのようなきっかけでまったくの専門外である認知症診療に携わることになったのですか。

    これまで内科医として外来診療を行ってきましたが、知識と経験がないために診断も治療もできない病気がありました。それが認知症という脳の病気です。匝瑳市は高齢化の進んでいる地域で、内科外来に通院されている患者さんは70歳代以上の方がほとんどです。必然的にご家族から『最近おばあちゃんが、怒りっぽくなって物忘れもひどいんです。』といった声がちらほら聞かれていました。そこで医師としてできることは何かないだろうかと模索している時に、名古屋フォレストクリニック院長 河野和彦先生が書かれている『ドクターコウノの認知症ブログ』に出会いました。

    河野先生は30年にも亘る認知症の診療経験から確立された診断治療法を2007年からインターネットで一般公開されていました。それがコウノメソッドです。

    認知症の診断治療法を探していた先生が、突き動かされた理由は何だったのですか。

    私が一番驚いたことは、認知症に関しては専門病院で診てもらっていても診断が違っていたり、診断が正しくても処方薬が適切でないために、かえって病状が悪化してしまう患者さんが沢山いるという現状を知らされたことです。

    日本はこれから超高齢社会に突入し、まさに認知症爆発前夜の状態にあります。

    今後は医師である以上、認知症という病気を避けて通ることはできないと判断し、それならば日本で一番多くの認知症患者さんを診ているドクターコウノに弟子入りしようと決意しました。

    現在も修行中の身ですが、これまでにコウノメソッドを実践することで認知症は高い確率で改善するということを数々経験してきました。

    先生が体験された認知症の改善例を紹介してください。
    80歳代の男性、前医の診断はアルツハイマー型認知症でした。施設では徘徊、入浴拒否、放尿などの陽性症状がある患者さんです。診察室では腕組みして仁王立ち、イスには座りません。怖い表情で診察も拒否され、途中で診察室から立ち去ってしまいました。この方は典型的なピック病という認知症です。すぐにアリセプトという薬を中止し、ウインタミンというお薬を少量だけ処方して1カ月後再診としました。その日はイスに座って穏やかな表情で診察を受けられ、帰り際には看護師さんに「ありがとう」と言葉をかけられました。このように適切な処方をすればまた穏やかな落ち着いた生活を取り戻すことができます。
    最後に、認知症外来についてご紹介ください。
    これまでお世話になった匝瑳市民病院に認知症専門医が不在とのことでしたので、この度コウノメソッド認知症外来を新規開設させていただく運びとなりました。これまで認知症は改善しないと諦めてきたご家族、介護に疲れ切ってしまったご家族、施設職員の方など一度患者さんと一緒に受診していただけたらと思います。あきらめずに治療いたします。

対応可能な検査、治療及び手術

認知症

  • アルツハイマー型認知症
  • ピック病
  • レビー小体型認知症

診療実績

認知症の改善例

医療の最終目標は患者さんの笑顔を取り戻すことだと河野先生は考えています。
医師が的確に診断し、適切な種類と量の薬を処方できれば、認知症は劇的によくなります。
それでは、認知症の改善例のうち典型例をいくつか紹介します。

  • 大学病院など専門病院でアルツハイマー型認知症と診断され、現在アリセプト5mg程度を服用している患者さんがたくさんいらっしゃいます。アリセプトは長期的に内服していると体内に蓄積してしまうことがあり、元々穏やかだった方でも易怒的になってしまうことがあります。易怒的になってしまったときに認知症が進行したせいだと考えてアリセプトを10mgに増やそうとする誤った判断がよく見受けられます。もしアリセプトを増量してしまうとさらに易怒的になり在宅介護が困難になります。この場合はアリセプト減量または他の薬剤に変更するだけで本来の穏やかな性格と笑顔が取り戻せます。アリセプトを増量しても副作用が出るばかりで認知症がよくなることはほとんどありません。
  • 大声で唸ったり、盗癖、徘徊などの困った症状がみられる方はピック病です。施設でも対応に困り果てていることが多いのですが、適切な薬剤を処方すればまた穏やかに落ち着いて施設での生活が送れるようになります。
  • うつ状態で食欲もなく体が斜めに傾いてしまい車イス生活になっている方はレビー小体型認知症です。中には診察中に寝てしまう傾眠の方もいます。この場合も適切な処方により食事が摂れるようになりますし、杖なしで歩けるまでに改善することも珍しくありません。